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初恋 ①

ここでは、「初恋 ①」 に関する記事を紹介しています。
仕事の書類の整理中に物流研究会の10余年前の機関紙が出できた。その機関紙に原稿依頼があり、3回連載された私小説を再発見した。
そこでこれをブログ公開することにした。

題してさくら


「初恋」

第一章 みほ子

 比呂志が6人兄弟の末っ子として生まれたのは長野県は中央アルプスの峰々が南に見える伊那谷の最北端の町であった。
伊那谷の真ん中を貫くように諏訪湖を源とした天竜川が南北に流れている。

 比呂志が入学した小学校は天竜川の東山裾にあった。小学校までは1里程の道のりを同じ村の悪餓鬼等と徒歩で通っていた。

もともと活発な比呂志は入学直後から遊び友達を増やし、益々行動半径を広げていった。学校が終わると同級生の家に行ったり,野山を駆け巡り、川で水遊びと家に帰るのは太陽が西山に沈んでからというのが常であった。AN0227.jpg


比呂志の生まれたのはいわゆる団塊の世代で、1クラスの編成は54人ものすし詰め教室であった。小さな町の小学1年生が4クラスあったのである。その同じクラスに決して美人ではないがどことなく垢抜けていて賢そうな、女の子がいた。なぜか悪餓鬼の比呂志は彼女の前ではいい子だった。その子の名を覚えるのも早かった。その名をみほ子という机


 みほ子は腰の辺りまで伸びた黒髪を、きれいにみつ編みにし、お下げのその先リボンはには可愛い花柄であることが多かった。同級生の男子が彼女のおさげを引張ったりしていじめることがあると、ひろし少年は、正義の味方と変身し,憤然として立ち向かっていくのであった。

彼女には小3の兄と幼稚園か保育園に通う妹がいるらしい。父親は中学校の教師をしていてかの女の家の本棚にはたくさんの本があるらしい。しかも彼女と妹の専用の本棚もあり、絵本や読み物が詰まっているという。漫画もあるかと聞いたら兄の部屋に積み上げてあるという。

みほ子の兄は時々妹の教室にも顔を出すことがある。やさしい面立ちで漫画本を貸してくれそうな人だ。名前も「ひとし」という。ひろしとは一字違いで気が合いそうだ。

 本などほとんどない貧農に生まれた比呂志にとって本とは教科書か農業月刊誌「家の光」ぐらいであった。本に飢える比呂志にとって、この兄妹に遭遇したことは本に接せられる絶好の機会であった。「みほ子の家に遊びに行けば大量の漫画が見せてもらえる」である

明日とはいわず直ぐにても遊びに行きたい。その事をいつみほ子に言い出そうとし思案をしていた矢先、みほ子の方から次の日曜日に遊びに来ないかと誘われた。比呂志は舞い上がった。

みほ子の住む村は、小学校から更に東へ1里ほど先の谷あいの集落である。
比呂志が道順を聞くと、その集落に通じる道路は九十九折の坂道を登りその先のトンネルを抜けると直ぐだと聞いた。

トンネルの近くまでは悪餓鬼の比呂志としては、学校帰りに道草を食った辺で知り尽くしている。ただトンネルを抜けたことはなかった。「何だそんなに近くだったのか」

同級生で同じ集落から通っているけさ美と「トンネルの向こうで待っている。」という。
日曜日が待ちどうしかった。山


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